📘第16話 なぜ、今「検査済証」なのか── 過去の成功体験が「負債」に変わる瞬間

2026/07/03

 
 
「シャコテンじゃないか?」
 
初めてその言葉を耳にしたとき、
正直、何のことか分かりませんでした。
 
『車庫転(シャコテン)』
 
本来は駐車場であるはずの空間を、
住居や店舗に転用して収益を上げる手法。
 
大阪では半ば公然と行われていた、
いわゆる“錬金術”です。
 
容積率の制限を超え、
本来建てられない空間で収益化し、
利回りを高める。
 
それは、
大阪特有の商売人気質をはじめとした、
その当時の時代背景の中では、
ごく合理的な判断でもありました。
 
確かに、当時はそれが
「賢い不動産経営」として浸透していた時代でもありました。
 
ところが今、
現場ではその「賢い選択」が、
静かに、しかし確実に、
出口を塞ぐ壁になりつつあります。
 
 
私は全国の一棟マンション(鉄筋コンクリート造)の売買に携わる中で、
数多くの物件と向き合ってきました。
 
そこで突きつけられるのは、
同じ日本であっても、地域によって
「検査済証」に対する前提が驚くほど違うという現実です。
 
これまで、検査済証がなくても、
一部の金融機関を除いては、
柔軟な判断のもとで融資が付き、
取引が成立してきたケースも少なくありませんでした。
 
金利は低く、銀行の審査は融資競争の中で、
現在ほど検査済証の優先順位が高くなかったからです。
 
しかし、時代は変わりました。
 
今、金融機関のコンプライアンス意識は極限まで高まっています。
 
ここで一つ注意すべきは、
「検査済証があれば絶対に安心」
という単純な話でもないということです。
 
書類があるからといって、
その建物が現在の適法状態を維持しているとは限りません。
 
その一方で、
検査済証がない物件は、もはや
「次に買う人が融資を受けられないある種のリスクの塊」
として、以前とは比較にならないほどシビアに見られる
ようになりつつあります。
 
 
では、検査済証のない物件は今後どう扱われるのか?
 
売主様は過去をどう精算し、
買主様はどの基準で選別すべきなのか?
 
検査済証をめぐる市場環境の変化を踏まえ、
これから物件をどのような視点で見ていくべきなのか?
 
金融機関の目線は今どのように変わり始めているのか?
 
その答えを、note本文で紐解いていきます。
 
これから物件の売却、
あるいは購入を予定されている方にとって、
本記事が判断基準の一助となれば幸いです。
 
 
今回の記事(7月号・ビジネス編)のポイントは以下の通りです。
 
✔ なぜ検査済証がなくても、これまで取引は成立してきたのか
 
✔ なぜ検査済証のない物件が、全国に数多く存在するのか
 
✔ なぜ今になって、検査済証が改めて問われ始めているのか
 
✔ これから、検査済証のない物件をどう判断すべきか
 
✔ 「今、買えるか」だけでは見えないリスク
 
✔ 検査済証のない物件は、これからどう動いていくのか
 
✔ 売主・買主・仲介は、何を基準に判断すべきか
 
👉【noteで読む】
 
 
検査済証とは、単なる行政上の書類ではありません。
それは、その建物が法的に正当であり、
将来の買い手に対しても自信を持って引き継げるという「証明」です。
 
今、私たちが問われているのは、
「融資が通るかどうか」という目先の判断ではありません。
 
その物件を、数年後の借り換え、
そして売却のときまで、
果たして「説明し続けられるのか」
という経営者としての視点です。
 
その一枚の書類が、将来の選択肢をどこまで左右するのか。
その現実を、現場の視点から整理しました。

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執筆者

高木 恵美

複数の業界で営業職を経験し、今は一棟収益マンションの仲介業を全国で行っています。
営業としての土台を築いたのは、リクルートでの4年間。厳しくも濃密な経験が、私の原点です。
感性を大切にしながら、物件の背景や売主様・買い主様の想いに寄り添い、同時に、数字や収支の分析など、専門性もしっかりと持ち合わせた“両輪”の姿勢で、誠実な取引を心がけています。