第1話 今はまだ売れるうちに

2025/06/12

最近、売主様からこんなお声をいただくことがあります。

「昔はすぐに満室になってたんやけど、最近ちょっと空室が埋まりにくくなってきて…」
「大規模修繕のことを考えると、正直、費用面で不安なんよね。」

長く大切に守ってこられた物件だからこそ、
手放すという選択には、きっと大きな迷いがあることと思います。

けれど、もし今ほんの少しでも「将来どうしよう」と不安を感じておられるなら──
“今はまだ、売れるうち”というタイミングを、心のどこかで感じておいていただけたらと思うのです。

この数年で、状況は大きく変わりました。
建材価格の高騰、建築業界の人手不足、労働基準法の改正。
大規模修繕には、以前の何倍もの費用がかかる時代に入っています。

「いざとなったら壊して更地で…」という選択も、今は簡単ではありません。
解体費用も、想像以上に高騰化しています。

加えて、少子化やエリア需要の変化により、
これまでのように“自然と満室”という時代は、徐々に終わりを迎えようとしています。

建材価格の高騰、職人の高齢化、建築業界の人手不足、そして労働基準法の改正──
この数年で、大規模修繕にかかるコストは確実に増加しており、
コロナ前と比較して、おおよそ1.4倍〜1.6倍程度の上昇とも言われています。

「そろそろ大規模修繕の時期かな…」と考えておられる方にとっては、
これからの計画が、かつてよりも重い決断を伴うものになってきています。

そして今、銀行の金利はじわじわと上昇傾向にあります。
融資が通りにくくなれば、買主側の動きも鈍くなります。
だからこそ、「1円でも高く売れるタイミング」は、“今この瞬間”かもしれません。

今の時代の買主様は、30代・40代・50代の“感度の高い層”。
数字にも、管理にも、未来にも真剣に向き合っている方が多く、
彼らがバトンを受け取れば、物件はまた新しい命を吹き込まれて、
“衰退”ではなく“再生”の道を歩むことができます。

物件に息づく歴史を、次の世代へと静かに手渡すという選択。
それは、何も“手放す”というよりも、
“つなぐ”という、温かい行為なのかもしれません。

私は、そんな大切な“橋渡し”を、丁寧にお手伝いしていきたいと願っています。

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執筆者

高木 恵美

複数の業界で営業職を経験し、今は一棟収益マンションの仲介業を全国で行っています。
営業としての土台を築いたのは、リクルートでの4年間。厳しくも濃密な経験が、私の原点です。
感性を大切にしながら、物件の背景や売主様・買い主様の想いに寄り添い、同時に、数字や収支の分析など、専門性もしっかりと持ち合わせた“両輪”の姿勢で、誠実な取引を心がけています。